| 「きみは正しいよ」首をかしげた。あたしは正しくないはずなのに、どうして肯定が返ってくるのか、わからなかったからだ。その人はにっこりと笑って「きみは、正しいよ」ともう一度言った。違う、そう言おうとしたのに、ぼろぼろと零れてきた涙にそれは遮られてしまった。そっと伸ばされたてのひらを受け入れれば、彼はうれしそうに笑った。今なら、私がしてきたこと全ての矛盾がなくなる気がした。許される、気がした。「どうしてこんなに愛しいのかな」本当に不思議そうに彼は言った。私も同じように「どうしてかな」と返した。そして視線を合わせて、二人で笑う。可笑しかった。私たちは今まで何も知らずに育ってきたんだ。彼はずっとずっと昔にも存在していて、だからこそ人間の醜さというものを知っていて。けれど、何も知らずに生きてきたんだ。だかわからない。だから、知らない。「ねぇ、ハオ」あなたの憎しみも痛みも辛さも、あたしは受け入れられる自信があるの。そうは言えなかったけれど、じっと私を見つめてくれる彼の瞳に、何も言わずに口付けをした。突然の行為に驚いたのか、僅かに目を見開いたハオがどうしようもなく愛おしくて「だいすき」と呟いた。人間は衝動を罪だと思い込んでいるけれど、決してそればかりではないと私は思う。そうでなければ、悲しすぎる。「」名前が呼ばれる。いつのまにか伏せてしまっていた顔を上げれば、少しだけ妖しい光を灯した黒があった。きれいだ。とても、きれい。「そういう目を見せるのは、僕だけにしてよ」そういう目って、どういう目?そう聞くために開かれた唇は、次の瞬間にしっかりとハオに塞がれていた。しばらくして離された彼の口から出た言葉に、私はとうとう彼を強く抱きしめるしか、できなくなるのだけれど。 |