|
何も見えないところで目を瞑るのは不可能だ。暗闇の中で暗いトンネルに入っても何も分からないように、それは不可能なのだ。であるからこそ、私たち人間は六感を持っているのであるが、それは殊に厭らしいことである。まるで、生に執着した証ではないか。ああ、なんと強欲な!!然らば息の根を止めてしまおうか、腐り続けて生き長らえるのであれば。それもまた、生への執着。血を混ぜ込んだ水を飲み干せば鉄の味がするに等しく、空虚を練りこんだ生ほど惨めなものはない。それを実体験している私が言えるたった一つのこと。それは、ゴールデンウィーク真っ最中のこどもの日に制服を着込む男、雲雀恭弥はとことん充実した毎日を送っているということだ。 「恭弥くん、今日は学校、お休みだよ」 「だから、なに?」さして問題もないだろう、という風に彼は返した。 「なんで制服着てるの?」 「学校が休みだからって、群れてる奴らがいないわけじゃないからね」 要は、風紀委員の仕事があるらしい。ふわぁ、とあくびを零した彼の瞳は、その行為のせいで少しだけ涙で濡れていた。 「熱心だね、ほんと」 「並盛の風紀委員なら当たり前でしょ」 「(この人、きっと、私<学校なんだろうな…)」 別に彼にとっての特別を望んでいるわけじゃないけれど。ふう、と溜息を吐いた。ところで、この人は今日が何の日であるか分かっているのだろうか。こどもの日だから学校が休みの日、という回答が聞きたいわけじゃない。人間的な意味で、今日は何の日なのか聞きたいのだ。「今日、何の日か知ってる?恭弥くん」学校に行くまではまだ時間があるのか、肩に乗っていた黄色の鳥の戯れてる彼に言葉を投げかけた。 「…馬鹿にしてるの、」 「してない、してない。ちょっと聞いてみただけ」 不機嫌そうな視線をこちらに寄越した彼に肩を竦める。被害妄想激しいんじゃないの、と思ったものの、口には出さなかった。出したらその時点で人生とさよならをしなくちゃいけなくなる。 「それで、知ってるの?」 その問いに、やはり彼は眉を顰めた。 「5月5日。こどもの日。僕の誕生日」 それだけ言うと、いきなり立ち上がり部屋の窓枠に手を掛けた。どうやら学校へ行くらしい。私はというと、その完璧な答えに身体が固まってしまっていた。(ちゃんと、覚えてるんだ)なんだか嬉しくなって、とうとう窓枠に足を乗っけた彼の制服の裾を掴んだ。「なに」どうやら、さっきの質問は彼の気に障ってしまったらしい。低い声が上から降ってきた。そんな声色もお構いなしに、にっこりと笑みを浮かべ、ちゅ、と不意打ちで彼の頬にキスを一つ。 「今日の晩御飯、恭弥くんの好きなもの作って待ってるから」 いってらっしゃい、そう言った私に、珍しく恭弥くんが「いってきます」と返した。(すごく小さい声で)窓から飛び降りたときに見えた彼の頬と耳が赤かったことに、じんわりと頬が緩むのを感じながら、今日の献立と彼の反応について思考を巡らした。 それでも人を愛すことを知っているのだ。 (080505//雲雀//お誕生日おめでとう!デフォルト勝手にマイダーリンですwwサーセンw) |