僕の妹は可愛い。どれだけ可愛いかというと、最近飼い始めた鳥より可愛い。ちなみに、その鳥がどれだけ可愛いかというと、思わず食べてしまいたいほどだ。つまり、僕の妹は思わず食べてしまいたいどころか思わず食べられたいほど可愛いということだ。(なんか文句あるの?)そんな僕の妹は手先が不器用で、そこがまた可愛い。いつも僕が結んであげてるのに、何故か今日は1人で踏ん張っていた。手持ちぶさな僕は、の部屋ののベッドに転がりながら、鏡の前で「うー」だとか「あー」だとか言ってるを観察していた。「いたっ」また髪の毛が絡まったみたいだ。鏡越しに見えるは間違いなく目を潤ませて「なんでできないの!」と嘆いている。そんな姿に我慢しきれず、僕は口を開いた。


「ねぇ、
「ごめんねお兄ちゃん。今忙しいから、後でね」
「…………」


何度目かのやり取りがまた繰り返された。かれこれ数十分、この状態が続いている。が不器用なことは、僕が一番良く知っている。本当に、不器用なのだ。例えば、ボタン1つつけるにしたって、両手と腕と、酷いときは足にまで針を刺してしまうくらいだ。それでも、最近はなんとか縫い付けることができるところまで上達した。(流石僕の妹だよね)それでも、だ。まだまだ不器用なのだ。は。「っい、た…!!もう、いったいなんなのよ!!」ほら、またひっかかってる。やっぱり見てられない、とベッドから起き上がり、鏡の前に座っているの後ろに立った。鏡越しに僕の姿が見えてるはずのに、リアクションを起こさないの様子から、意地でも自分でやる気が見えた。けれど、僕としてはこれを見過ごすわけにはいかない。


「…雅、髪、抜けるよ」


すう、との髪を一房持ち上げ、指を通した。僕に似て、真っ黒でサラサラな髪が零れ落ちる。綺麗だな、と思いながら、無反応なの耳を掠めて頬に触れた。ぴくり。少しだけ身体が震えたのが見えた。


、」
「いいのっ!ほっといてよ、もう!」
「え、」


フリーズ。僕の頭が真っ白になった。ほっといてよ、なんて、から一度も言われたことがなかった。僕を拒絶するような言葉は、一度たりとも、だ。嫌われた、のかな。え、嫌われた?に、嫌われた?なにそれありえないでしょ、僕がに嫌われるなんて!だけど今、は僕に向かって、ほっといてよ、と言ったわけで。僕の耳がおかしくなったのかなそんなことありえるわけないでしょばかじゃないの。そんなこと、絶対に、が僕を、いや、まてまて、そんなこと、は、「…おにいちゃん?」はっ、と目の前の景色が戻っていた。鏡の方を向いて眉間に皺を寄せていたは、こちらを向いて、心配そうに申し訳なさそうに眉を下げて僕を覗き込んでいた。


「…なに」


思ったより低い声が出てしまって、の顔が少し歪んだ。(ああ、泣きそうだ)(僕もも)ぐ、と下唇を噛むを見て、罪悪感がいっきに胸を突き抜けた。が下唇を噛むときは、泣くのを我慢しているときだから、だ。泣かせてしまう。ごめんね、と言おうと手を伸ばしたとき「ごめんね、おにいちゃん」の口が開いた。


「だって、あたし、お兄ちゃんに頼ってばっかりじゃ、だめだと思って」
「…?」
「お兄ちゃんだって、ずっと、あたしといてくれるわけじゃ、ないし」


の声は震えていた。そのくせ、目に涙が浮かんでいるわけじゃないのが不思議だった。今まで、ずっとを見てきたのに、どうにも、この顔は初めて見たからだ。けれども、少しだけ視線を下に落とせば、ぎゅ、と強く握った拳が見えて、思わず目元が緩んだ。


「ねぇ、


今度は、優しい声が出た。なんて現金な兄なんだろうか。少しだけ自己嫌悪に走りながら、優しくの頬を撫でた。それに驚いたのか、ぱちり、とが大きく瞬きをした。それがとても可愛くて、愛しくて、気がついたらを抱きしめていた。(ほんとうに、ぼくのいもうとはかわいい)「おにいちゃん?」耳元で囁かれたその声が、くすぐったくて仕方がなかった。


は僕のたった一人のかわいい妹なんだ。だから、大丈夫」


ずっと、僕の妹だから。そう言って身体を離して、ほら、と手を出せば、はふんわりと笑ってから櫛とヘアゴムを差し出した。今日はとびきり可愛く、三つ編みにでもしようかな。緩んだ頭でそんなことを思いながら、の髪に指を通した。





(僕はを大事に大事に愛してるんだ)(だから彼氏なんて当分、認めない)





(050818//雲雀//いやなんかもうやりすぎたww相互記念に勝手に雅さんへ捧げます!アザース!!)