痛いのは嫌いだ。先ほど豪快に転んでしまった為に、じんじんと痛みに冒される右膝に視界が歪んだ。久々の痛覚に、どうも涙腺が緩いらしい。(かっこわるい)痛いのは嫌いだ。好きな人がいるなら見てみたい。(やっぱり訂正。マゾには会いたくない)


「いたい」


言葉にすれば和らぐかと思って発した音は、やっぱり意味を成さなかった。どちらかといえば、痛みが悪化したような気がする。気がするだけならいいのに、と思う。とうとう目一杯に涙が溜まってきた。落ちないように上を向くと「ちゃぁん、なぁにしてるのかしらぁん?」ジョセフがいた。「べつに」そう言った唇は上手く動いていただろうか。彼の様子からするに、どうも上手くいかなかったみたいだ。というよりも、あたしの顔を見ればそんなのは一目瞭然なのだが。今にも零れ落ちそうな涙が、情けないあたしを語っているのだろう。案の定「…え、」言葉を失っていた。本当に期待を裏切らない人だ。


「なに、用事が無いなら、あっち、いってよ」
「えっ、えー、な、なに泣いちゃってんのォ?」
「べつに」


まさか、転んだ、なんて言いたくなくて俯けば、ぽたり、と涙が零れた。(ジョセフのせいだ)そんなあたしをしばらく黙って見てから、ふう、という溜息が上で聞こえた。なんだかますますみじめじゃないか。また涙が視界を包む。ずきん、と痛んだ膝を抱え込んで蹲る。零れた涙が傷に当たる「っい、た、」塩分がとても沁みた。ばかみたいだ。


「…んー?なんだ、怪我してんのかよ」
「うっさいジョセフ」
チャンってば、おっちょこちょいなんだからァ」
「うるさいっ、」


けらけらと笑うジョセフに、どんどん腹が立ってきて涙も止まってきた。(なんだ、もう、このアホ男め!)きっとあたしを覗き込んでいるだろうジョセフの頭にぶつからないように、すっくと立ち上がる。そのとき、まだ目に溜まっていた涙がぽろりと零れた。きっと最後の一滴だろう。「お、おい、」いきなりすぎて驚いたのか何なのか、慌てているようなジョセフの声が聞こえた。


「ジョセフ、」
「な、なにかしらー、と」


まだふざけた言葉遣いをする彼に、一言だけぶつけた。


「そんなんじゃぁ、まだまだシーザーは超えられないんだからッ!」
「な、なんだそれェ!!」


どういう意味だコラ、逃げんじゃねェッ!!そのまま走り去ったあたしの後ろからそんな叫び声が聞こえた。






スプーン一杯分の涙

「シーザァアアア!!てめーには負けねェぞ!」
「…いきなり何なんだ、ジョジョ(どうせまただろうけどな)」


(080320//ジョセフ//カノたんへ。これからも一緒に頑張るぞ!)