寒い。すごく寒い。別に風邪を引いただとかそういうわけではなく、ただ単に季節的に気温が低いのだ。それでも寒いものは寒い。うー、と唸っていると、承太郎の「やかましい」が聞こえた。だって仕方ないよ寒いもん。あたしは寒くて歯がガタガタするというよりはむしろ唸ってしまう方なんだ仕方ないじゃない。そんなことを言えばプッツンしそうだから敢えて口を噤んだ。けれど、このまま黙るのは癪だから、一言だけの抵抗を加える。(そしてこれはきっと承太郎が予測しているだろうことだ)


「寒いの」
「唸る必要ねーだろ」
「寒さを紛らわせてるの」
「…ようわからんがな、」


「とりあえず黙ってろ」そう言った承太郎に少しばかり腹が立った。だって寒いんだ。手元にあった枕を抱き締める。(あったかくない。やだなぁもう)ちらり、と視線を承太郎に移すと、先ほどと変わらず、やはり本を読んでいた。この集中から見るに、海の本でも読んでいるんだろう。海に関しては、似合わない図書館に行ってまで調べる執着ぶりだ。(ちょっと嫉妬なんて絶対言わない)


「ね、承太郎寒くないの?」
「寒いってほどじゃあねーだろ」
「ふーん…」


よっと。そんな掛け声と共にベットから降りる。腕の中から出した枕はあたしの体温を奪っていたらしく、少し温かくなっていて、手放すのがもったいなく思った。そこをぐっと我慢して枕をベッドの上に戻し、ゆっくりとソファに座る承太郎の背中に回り込んだ。無視を決め付けているのか、気付いていないのか(多分後者だろうけど)とにかく背中ががら空きな承太郎に、鼻を擦るような形でギュッと抱き付いた。すぐ近くにある体温に安心して瞳を閉じれば、よりその熱を近くで感じることができた。はぁー、と幸せの溜息が漏れてしまう。(あったかいって、なんでこんなにしあわせになれるんだろう


「ぬくいー」
「俺で暖をとるんじゃねぇっ!!」
「やだー。ぬくいー」


あたしを剥がしたいらしく、肩越しにこちらを振り向く承太郎と目が合った。誤魔化すように笑えば苦い顔が返ってきた。(短気め)ふう、と息を吐いた承太郎があたしの名前を呼んだ。


、」
「ノーだよノーだよ。答えはノー」
「……やれやれだぜ」


お決まりの台詞を吐いて溜息を吐いた承太郎に、とうとう抵抗する気が失せたか、とにんまりと笑う。なんだかんだ言って、承太郎はあたしをよく知っていて、色々言いつつ甘やかしてくれる。(だから離れられない)ぬくいなぁ、と鼻先を背中に擦り合わせれば、強い煙草の匂いが鼻を刺した。思わず顔が歪む。


「っう、煙草、くさい…」
「アホか」
「承太郎のばか」


くつくつと笑う彼は、きっとこうなることを読んでいたのだろう。悔しいなぁ、と思いながら、どこか安心するその匂いを、もう一度吸い込んだ。





Cradle in the Heaven




(080323//承太郎//カノたんに送ったやつを修正。彼の背中は広くて煙草臭そうだという)