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「寝るか」 え。そう言う暇もなく承太郎に左腕を掴まれてしまっていた。「ちょっと、放して」そう口を開きかけたあたしの方を見た彼の緑色の目は、どことなく気怠そうだった。なんとなくとろん、とした緑色があったのだ。いつもはあまり見せないその色に驚き声を失えば「なんか言ったか」と承太郎が言う。はぁ、と溜息を吐いたあたしは、ただ黙ってあたしの腕を掴んでいる承太郎の右腕に頭を擦り付けていた。 「おい、」 「眠いなら早く寝よ」 あたしはあんまり眠くないけど。そこまでは流石に言えずに、次はあたしが承太郎の腕を引いた。だが、進ませたはずの足は一歩も動いていなかった。(あれ、)その元凶である彼を振り向けば、じっとあたしを見下ろす緑。「なに」なんとなく不機嫌になって口を開けば、またもや唐突な言葉が降って来た。 「ヤってもい、」 「あはは一回死ねばかたろう!!」 「もう絶対一緒に寝てやんない!」そう叫んで承太郎の腕を降り払って部屋を出ようとして、また腕を掴まれる。(ああ、もう何だっていうの!!)思いのほか強く握られた腕に、少し顔を顰める。そんなこともお構いないらしい承太郎は、やっぱり少し眠いのかもしれない。(いつもだったら、まぁ、あんまり変わらないけど、ここまで強く握ったりしない) 「」 「っだからなに、」 「寝るぜ」 「っ、あんた、は、」 耳元でそういうことを言うな!けれどもやはりそう言う前に背中から抱き込まれてしまい、声は出なかった。首筋に吐息が近い。思わずそれに反応してしまい、びくり、と身体が跳ねた。(これも全部承太郎のせいだ)少しばかり焦りながら、肩越しに承太郎を見た。 「じょ、じょーたろ、」 「」 またもや突然呼ばれた名前に一旦行動が止まり、我に返って口を開いた。 「…なに」 「抱き枕」 「は?」 意味が分からない。そんな顔をしたあたしに、承太郎が後ろで笑った気がした。眠いくせに、こういう仕草だけはいつもと変わらないらしい。それはそれで腹が立つ。「つまりだ、」どうやら分かりやすく要約してくれるらしい彼の言葉に耳を傾けた。 「黙って俺に抱かれてりゃあいい」 「………あ、そ」 (なんであんたはいちいち、ああ、もういいや)こてん、と観念して承太郎の肩に頭を預けた。彼の髪が首筋に当たる。なんだかなぁ、苦笑いをすれば「なに笑ってんだ」と言われた。あんたに言われたくない。ていうか、見えてないはずなのになんでわかるの。それは敢えて言わずに、肩に顔を埋めている承太郎の頭を撫でた。くしゃり、と手に触れた硬質な髪の毛に、思わず唇が歪んでしまって、やっぱりあたしも眠いのかな、と思った。 「そういえば承太郎、抱き枕使う人ってエロいらしいよ」 「…ほーお」 そんなら、ご希望に答えてやんねーとな。そう言った承太郎に平謝りするまであと五秒。 不条理に浮かぶ三角フラスコ (080323//承太郎//カノたんに送ったのを修正。タイトルは深い意味ありません(^ω^)ニコニコ) |