この馬鹿げた世界はどうしてこうも美しいのだろうか。罵声を浴びせ合う人々は腹の奥底で人を愛し尊敬し妬み嫌い殺しそして死に、それでも微笑みあって生きている。嗚、それが美しいということに気付いている人間はどのくらいいるのだろうか。軽蔑すべきは人類ではなく、私たちを生み出した神であることに気付いている人間はどのくらいいるのだろうか。もしもこの地球上のうち、優先し存在すべきが人類だというのならば、神は大層なナルシストであろう。しかし、しかし、ああ、しかし、どうしようもなく苛立つのはきっと私たちが人間であるからなのだ。そして、彼にこの醜い銃口を向けるのもまた、避けようのない真理。


「ということで、私の為に死んでくれませんか骸さん」
「おやおや、随分ぶっ飛んだ思考ですね」


まぁ嫌いじゃありませんけど。そう言う目の前の彼はとても美しい二対の瞳を私に向けた。彼の額に真っ直ぐに向けられた銃口を臆すことなく(むしろ心底楽しげに)その穴を見つめた。狂っている!そう叫びたい気持ちを抑えたのは私の理性。落ち着いて考えてみれば、私だって同じくらいの狂人なのだから。


「ところで、君は重大なミスを犯していることに気付いていますか」
「いいえ、まったく。今初めて聞きました」
「くふ、それはご愁傷様です」


いつもと変わりない声色。この人はもしかしたら常時銃を向けられているのかもしれない。ならば、きっと人間ではないのだろう。


「あなた、本当に人間ですか。」
「くはは!あなたはまったく、面白い人ですね」
「嬉しくないです」
「くふふ、そうですね。もしかしたら、最早人間じゃあないかもしれませんね」


それにしても、そうですか。人間じゃないと。くふ、本当におもしろい。ぶつぶつと呟く彼は、ふと向けていた銃口に手を伸ばした。思いもしなかった動きに目を見張れば、彼の瞳が弓なりにしなる。何がそんなに面白いのか、小一時間問い詰めたい気分だ。(そうすれば私も少しは近づけるだろうか、彼に)


「ああ、君のそういう顔は、好きですよ」
「そうですか」
「ええ。その、捩れに捩れた感情が垂れ流しになっている瞳が」


息が詰まった。ヒュ、と喉が音を出す。いつの間にか、彼は私の後ろにいた。そうして、その綺麗な指で私の首を絞めている。右手だろうか。(どちらでもいいか)声を出すことすら出来ない私の状況を楽しんでいる声が耳元ではっきりと聞こえた。


、君の重大なミスは、」


くふ、と一つ笑いを零して、彼は指に力を入れた。


「六道骸は君を殺せないと、そう確信したことですよ」







シスター、弾き金を引け




(070213//骸//これは鬼畜だと言い張ってみるチャ子)