「どこですか、むくろさま」


黒い布で目隠しをしたままのの両腕が僕を求めて宙を彷徨った。気配を消してそれを傍観している僕の唇はきっと歪んでいることだろう。それの何がおかしいのか、僕には理解できない。(愛する人を愛でることの何が悪いのです?)心の中で微笑み「」彼女の名を呼んだ。それに恐ろしく敏感に反応したは「むくろさま、」とこちらを向いた。ここはやはり、嬉しく思っていいところなのだろうと思う。そんなに大きな声で彼女を呼んだつもりではなかったのだから。そしてたったの一言だけでこちらに気付いてくれたに、僕はとてつもない喜びを感じた。そしてまたこちらへ向かって伸ばされる両腕に目を細める。その両手首には赤い痕がある。僕が昨日縛って付けたものだった。その手首を取って、唇を寄せれば「あ、っ」の甘い声が降ってきた。


「くふ、感じてるんですか。
「っむくろ、さま、」
「僕の名前、そんなに呼びやすいですかねぇ」


きみの口からはそれしか出ない。ぐ、と強くの顎を掴めば、きしり、と骨が軋む音がする。それさえも愛おしく、ぺろり、と彼女の顎に舌を這わせれば、やはりびくりと震えたが啼いた。吐き気がするほどのその甘さに顔が歪む。どれだけ僕は彼女に依存しているのだろうか。


「まったく、醜いですね
「っあ、え…?」
「痛みに喘ぐきみは、とても醜いと言っているのですよ」


がり。の顎に噛み付いた。それでも跳ねる彼女の身体と声は、悦びしか指し示していなかった。なんて浅ましい、僕は薄い笑みを口元に浮かべ、次はの肩に強く噛み付いた。じわり、と彼女の皮膚から血が滲み、僕の口内を鉄の味に犯した。それをぺ、と吐き出しの前髪を掴む。ぐ、と近づいた彼女は「ぃ、た、」と苦痛の色を強く表した声を発した。


の血で僕の口が汚れました。舐めてください」
「ッ、むくろ、さまぁ、」
「おやおや。きみは僕の言うことを聞いていなかったんですか」
「ッ、」
「僕の名しか呼べないのか、と言ったでしょう」


そう言った僕の声が余程恐ろしかったのか、とうとうは恐怖のために震えだした。ああ、これが見たかった。僕は今までにないくらい笑みを深くし、彼女の耳に唇を寄せる。楽しくて堪らなかった。


「ぁ、あ、」
「そうです、。僕は、その声が聞きたかったんです」
「っふ、ぁ、ああ、」


じわり、じわり、と彼女の黒い目隠しに染みができ始める。泣いているのだろう。(なんていとおしいのでしょうか!!)そんなに僕はそっと、唇を重ねた。嗚咽を上げながら、それでもの血に塗れた僕の口内を舌で探る彼女の頬に、とうとう涙が伝った。布では吸い取りきれなかった水分のせいで布が緩んだのか、僕が無意識のうちにの目隠しを外していたのか、答えはどちらでもよかった。だいたい、確かは血が嫌いなはずなのだ。(それを舐め取っている。僕の為に、僕だけの為に!なんて幸福でしょうか!)


「誰よりも愛しています、






不埒なイデア
(きみがいればきっとぼくはすべてをすてられるでしょうね)




(080329//骸//病んでる骸さま。すいまにささげます)